~包み隠さない気持ち~

39/40
前へ
/126ページ
次へ
「こんな時に、何をっ……ん……はぅんっ」 「ごめ……ん、粘液を満遍なく塗らないと危ないから、さ」 羞恥に頬を染め、身体をくねらせて逃げようとするクーちゃんに僕は触手で粘液を塗っていく。 服の上からは勿論、ワンピースの下にも触手を潜りこませ、そのきめ細やかな肌に染み込ませるように、粘液をコーティングしていく。 「っ――――――!!」 クーちゃんが何かに耐えるように目を瞑って、身体を小刻みに振るわせた。 クーちゃんの身体から発せられるメスの匂いが一層濃くなり、表情もとろけたようになっている。 「もう、充分……だね」 先ほどから、電流により僕の意識は飛び飛びだ。 絶縁体の触手は全てクーちゃんに回したので、今僕には二万アンペアの電流が直接流れている事になる。 さっきから、自分の細胞が恐ろしい速度で死滅していってるのが分かる……それでも決してクーちゃんを離さず、触手と粘液で電流から守っていた。 クーちゃんに、守られてるっていう意識はないみたいだけど。 「り、凛々……こんな時に、悪ふざけも大概にせんかっ」 「ふざけては、ないんだけど……それじゃ、いく、よ」 「ふぇ――」 呆けたような声を最後に、触手でもってクーちゃんの身体全てを包んだ。 多少息苦しいかもしれないけど、これなら完璧に電流を防げるはずだ。 そのままハッチの開いた入口に突っ込み、中に入った事を確認して、花弁が開くように触手を開いた。 「ぷ、はぁ! 凛々、一体何を――と、ここなミズヌシの中か? という事は、成功したんじゃな!」 クーちゃんの声がする。良かった、無事に侵入できたみたいだ。 僕は力を振り絞ってハッチを閉じた。 これで万が一にも、電流が中に漏れる事はないはずだ。 (あぁ、もう無理かな?) 何気なく思った瞬間、左の耳で癇癪玉が破裂したような音が鳴った。 どうやら鼓膜が破れたみたいで、何も聞こえなくなった。 僕の身体から上がる煙は焦げ臭く、脂肪の焼ける匂いというのに吐き気がこみ上げた。 少しだけ吐いたら、また、赤黒いものだった。 僕の身体は、こうやって人間として必要な器官を捨てて、作り変わったんだろう。 それでもやっぱり……電流が流れ続けるのには耐えられなかったみたいだ。
/126ページ

最初のコメントを投稿しよう!

334人が本棚に入れています
本棚に追加