334人が本棚に入れています
本棚に追加
カイマ博士の態度が気になった時、ふと自分の身体が上手く動かない事に気が付いた。
場所は360度全てが白い壁に囲まれたようなところで、僕の家なのか外なのか判然としない。
光源は見当たらないのに周りは明るく、台に寝かされている僕の身体は――。
「え?」
――左腕と左足が、無くなっていた。
「あららぁ、今頃気付いたの? そうよね、痛みがないから理解しにくかったわよね~」
いつもの白衣には赤い汚れが付着していて、カイマ博士の唇も恐ろしいほど艶やかな赤色をしている。
いや、それよりも……僕の手足がない?
何度見ようと左腕と左足は存在せず、緑の手術衣のような服からは、右側の手足しか伸びていない。
だというのに、痛みは全く無い……普通を容易く通り越した異常に晒されて、それでも僕は懸命にカイマ博士を睨みつけた。
「僕に何をしたんですか!?」
博士は一瞬きょとんとした、外見に似合わず子供っぽい表情をした後。
「――あは、はははははっ。ははははははは!」
甲高く、ひび割れた笑い声を上げた。
赤い唇が裂けて更に真っ赤な口内が覗き、呪詛のような笑い声が吐き出され続ける。
いつもの温和で知的な博士からはかけ離れた声に、僕は二の句を継げられず呆然となった。
すると突然博士は笑うのを止め、首の動作だけでこちらを向いた。
――その手には、僕の左足が握られていた。
「私は切り落としただけよ? 別に鎮痛剤も何も使ってないから、もし痛みがないのならそれは君自身の力~……痛覚を遮断できる、触手体としての機能よぅ」
「触手、体……?」
最初のコメントを投稿しよう!