~耐え難く、かけがえのない刻の合間の終わり~

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おもむろに、カイマ博士は僕の左足を抱きしめた。 何をして――そう言おうと思った時、驚きの感覚が脳内に伝わってくる。 「分かるかしら~。君から切り離された左足は、こんな状態でも感覚を共有できるのよ。通常細胞というのは増殖と死滅を繰り返すものだけど、触手体の場合は違う……死滅もするけれど、その量は増殖のペースと比べると明らかに少ないの。一定の期間を過ぎれば細胞は増殖を止め死滅するのみになるけれど、これも触手体には当てはまらない……ほら」 もう片方の手に持っていたメスを、深々と左足に突き刺した。 僕の足からは血が一滴も出ないばかりか、瞬く間にメスは錆びて砕けてしまった。 「細胞は個々で生体活動を行えるようになり、血液という栄養の供給源は要らなくなる。血管を作るくらいならぁ、その場所に細胞を詰めたほうがいいって事。更には危険に関する適応力も高くなり、その際粘液や性質変化を繰り返して――こんな事が可能になっていくの」 カイマ博士はメスをもう一本取り出し、再び左足に突き刺そうとした。 だけど皮膚に当たった瞬間、まるで硬いゴムのように刃を跳ね返し、触れた先から溶かしていく。 「分かる~? 君は生物学的にも遺伝学的にも、人間の理想とするような進化を遂げたのよ!」 ……こんなに狂った人がいるなんて……つまり僕は、クーちゃんを助ける為だと担ぎ上げられ、まんまとこの人の策略にハマったって事なのか。 ――そう、だ。クーちゃんは? 他の皆はっ!?
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