~耐え難く、かけがえのない刻の合間の終わり~

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僕の不安を嘲笑うかのように、カイマ博士は僕の足を無造作に放り投げ、何事かを呟いた。 聞いた事のない言葉を言い終えるのと同時、真っ白い空間に亀裂が走る。 床や壁、果ては天井にも縦横無尽に亀裂が走り、見る見るうちに隙間を広げていった。 雲の切れ間から光が差すように――空中に溶けていく真っ白な壁の代わりに、僕の視界は久しぶりの太陽光に溢れていた。 そうこうする内に真っ白な空間は消え失せ、僕を乗せた台だけがポツンとあるだけになった。 場所はどうやら……家の庭らしい。 「“実験”への最終確認を終了……連れてきていいわよ~」 博士は耳に付けたマイクのようなものに喋り、直後門の開く音が聞こえた。 「クーちゃん! ミッちゃん!」 「っ凛々――その姿、は」 門から入ってきたのは、あの遊園地にいた男達(確か有機体とか言ってた)に捕まったクーちゃんとミッちゃんだった。 クーちゃん達は両手を縛られていたけど、怪我をしている様子はない。 そこだけは安心し胸を撫で下ろすと、クーちゃんが火を吹くようにカイマ博士へ怒鳴った。 「カイマ……貴様凛々に何をしたんじゃ! 大人しく捕まれば危害は加えんと言ったくせに……この外道が!!」 どうやらクーちゃんは僕と手足が足りない事に怒っているようだった。 だけど博士は不思議そうな顔でクーちゃんを見返し、おかしそうに笑った。 「なにがおかしいんじゃ!」 「ごめんなさい、お姫様~。そうね、今の凛斗君を見たら怒るのが当然かしら……でも大丈夫よ、いつでも付けられるから」 その言葉に裏はないように思え、また僕もそう感じていた。 それはクーちゃん達の技術力でという事じゃなく……多分、僕自身だけで付けられる気がする。 切り口に手なり足なりをくっつけるだけで、繋がるという変な確信があった。 「じゃとしても、こんな非道な行為を見過ごすと思うなよ! ワシの大事な者を傷つけた報いは、必ず受けさせるからの!」 「どうやってかしら? 現時点でお姫様に味方するのはそこの侍女が一人と、この惑星の原住民だけよぉ。他のはみ~んな、あなたの敵なんだから」
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