~耐え難く、かけがえのない刻の合間の終わり~

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博士の言葉は、僕に衝撃を与えた。 そんな……クーちゃんを狙う人達が、ミッちゃん以外の全員だなんてっ。 僕が顔を知ってるだけでも十数人はいたはずだから、そんな大人数がクーちゃんを裏切った事になる。 ……いや、最初から騙していたんだ。 信じた者に裏切られる……クーちゃんの顔は、辛そうに歪んでいた。 「……ミズヌシが現れた際に、緊急信号を本国へ発信しました。ここで私達を捕まえても、もう本国にあなた達の居場所はありません」 今まで黙っていたミッちゃんが、刺すような視線で博士を睨みながら言う。 さすがミッちゃん――そう思った次の瞬間に、知らない男の声が僕の耳に届いた。 「本国では我らが出発した直後、クーデターを起こしている。これまでの報告からして現王政は完全に潰され、王や側近は地下牢に幽閉……今ごろは処刑の日取りでも決めているはずだ」 「……そん、な。お父様が……」 「……あなたも裏切っていたのですか」 姿を現わした男の人――僕にも見覚えのあるその人は、いつもならこんな場所にいない人だ。 門の前か、リムジンの車の中にしかいないはず……父さんの運転手をしてる、元護衛長のラングさん。 「裏切り? 私は裏切ってなどいない。この立ち位置こそが本当のものなのだ」 低い声でミッちゃんに言うと、ラングさんはカイマ博士の横に立った。 博士が遅かったわねと声をかけると、細い目を一層不機嫌に細めて溜め息を吐く。 「見つかった事自体が驚きだがな。ミズヌシの暴走に巻き込まれたのだろう、多少のヒビが入っているが、起動に問題はなかった」 ラングさんがスーツの懐から出したのは、あの電磁波発生装置だった。 確かに言った通りヒビが入っていて、一見するとガラクタにしか見えない。 クーちゃんを見ると耳飾りの水晶が無くなっていて、宝石のような水晶はラングさんのゴツい手に握られていた。 「今度は、何をするつもりじゃ……クーデターで平和じゃった国を混乱させ、凛々を異質なものに変え、遊園地では無関係な人々を巻き込んで……貴様らは何が望みなんじゃ! 苦しめるのなら、ワシ一人で十分じゃろうっ」
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