Fine

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 幅広の刷毛でべったりと塗り付けたような青い空が頭上にひろがっている。  公民館のエントランスで独り、缶コーヒーを片手にゆっくりとした時間を過ごす。  館内では、十数名の団体が地元を探索するという名目の研修の点呼が行われていた。どうも教師の集団のようだ。  それを後目にコーヒーをひとすすり。  平日の朝九時に、なんとなく本が読みたくなり併設された図書館に足を運んだ。ヘルマンヘッセ、スティーブンキング、カフカにイザイヤペンダサン。目にした本を数ページ開いては本棚に片していると便意に襲われた。  うろうろと薄暗い廊下を小走りし、木製のトイレのドアを開き、洋式に腰掛けると力任せに放出する。  そして大便を済ませた後にエントランスで一服しようと、この色あせたプラスティックのベンチに腰を下ろし至福の時を過ごしているわけである。  先々月の末、私が働いていた繊維工場が突然、倒産した。いや、表向きは突然の出来事なのであるが、実際は去年の夏から経営は思わしくなく、冬のボーナスが通常の半分以下になった時、社内には不穏な空気が流れていたのだ。  いち早く危機を察知した若手は転職先を探し、早々とその姿を消していった。上司はリストラの手間が省けたと喜んでいたが、結局、倒産してしまったのだった。
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