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気がつくと、点呼を終えた教師らしき群が、にこやかな笑顔で出口に停めてある送迎バスにガヤガヤと乗り込んでいる所であった。
小学六年の頃の担任に後ろ姿のよく似た男が一人、最後尾を歩いている。神経質そうに背筋の延びた立ち姿で、キョロキョロと周りを見回していた。
あの教師の名は確か〝岸川〟といった。生徒との距離をきちんと置くタイプで、生徒の評判は良くなかった。
私のクラスは比較的大人しいと目されていたのだが、実際は陰湿な虐めが繰り返される場所でもあった。
リーダー格の山下は市議会議員の孫で、地元じゃおいしいと評判なレストランの跡取り息子である。そんな彼は頭が悪かった。
腕っ節だけが強く、運動をやらせれば右にでるものもいない、山下の周りにはアホな女子や、人の陰でしか生きていけないようなバカな男子が群がっていた。
私は、幼なじみの瀬戸口という警察官の息子といつも一緒にいた。彼の正義感に、いつも感服させられながらも、ヒーローになり得ない虚弱体質がアンバランスで、かわいそうな男だった。
誰かが虐められれば、瀬戸口が救おうと山下につっかかる。めんどくさそうに拳を握り一振りすると、瀬戸口は鼻血を出し泣きそうになっていた。毎回、滑稽なぐらいその光景を目にしていた。
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