始まりは入学式

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「俺、珠塚高校行くわ」 去年の3月、双子の兄貴が突然部屋に来て言い残していった。 文武両道、容姿端麗、明るい性格で積極的な兄貴には色んな高校から引く手あまただったのだが… 「た…たぁまぁづぅかぁ!?ただの公立校だろ!?色々推薦来てたじゃんか!!」 「あぁ…蹴った❤」 「はぁぁっ!?」 俺は開いた口が塞がらなかったね。 「ちなみに俺、寮に入るから♪またな、深夜」 「おい、正午!?」 …兄貴は本当にすべての推薦を蹴って珠塚高校に入学してしまったのである。 だだっ広くなった我が家に俺はぽつんと立ち尽くした。 もともと兄貴と俺は産まれた日にちの関係上学年は別になっている。 兄貴は四月一日の午後11時58分。 俺は四月二日の午前0時2分にこの世に生をうけた。そして、学年は違えど双子として今まで生きてきた。…が、 「寮って…何で…」 必ず毎日顔を会わせていたもう1人の自分が、その日を境に我が家から姿を消したのである。 …納得いくわけがない。 兄貴は既に決めていただろうが、俺は心の準備も出来ていないのにあっという間にいなくなられてしまったのだ。 幸い珠塚高校はかなり入りやすいとんでもなく偏差値の低い高校だったので、特に何の問題もない。 俺は迷わず、兄貴を追うことにした。 だが、兄貴はきっと俺の性格を見抜いていたんだろう。双子なだけあってお互いにお互いを良く分かっていた。 ただ、たった数分の差なのか?その時の俺は兄貴を追うことだけしか考えられなくて、周りを見る余裕がなかったんだ。 その唐突な進路変更に兄貴の思惑があったなんて…
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