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いちばんぼーし、みーつけた
夕方が少し過ぎた時間。
私と香川くんは二人で下校している。
たまたま下足室で会って、たまたま帰り道が一緒だった。
「・・・・・」
「・・・・・」
…なんか、喋る事、ないなぁー…
なんとなくちらりと香川くんの横顔を見ると、
香川くんはボーって空を見上げていた。
私もつられて空を見上げると、ほのかな光を見つけた。
「あ」
私が小さく声をあげると、香川くんはボソッと呟いた。
「いちばんぼーし、みーつけた」
「!!」
驚いてしまったのは、今私の頭に浮かんだのも同じフレーズだったから。
「それ知ってる!!」
私が思わず食いつくと、香川くんは爽やかな笑顔を私に向けた。
「おお。マジかよ?」
「うん!」
「あれだよな?ちっさい時に見てた…」
「うんうん!歌のお姉さんが歌ってた!」
私達は笑いながらもう一度、1番星を見上げた。
「このぐらいの時期になると、あっという間に暗くなるよなー」
「うん。でも夏と違って星見上げながら帰れるから、楽しいよ」
「あ、見上げすぎて電信柱に頭ぶつけたりするんじゃねぇ?」
「え…」
「図星か」
あ、また笑った。
「…ドジだもん」
私が香川くんの不意打ち笑顔に赤くなると、
彼は私の頭をくしゃっと撫でた。
ちょ!!それ反則!!
「…よし、危なっかしいから送っていってやるよ」
「え!!」
「また電信柱に頭ぶつけたら嫌だろ?」
「…うん」
そこまでドジじゃないし、学習能力ぐらいあるから大丈夫だけど…
もう少し、一緒にいたい。
「不思議といつもよりキレイに見えるなぁ」
「そうだな」
ゆっくり、ゆっくり、ゆっくり。
わざと速度を遅くして帰った、私の恋が始まった帰り道。
いちばんぼーし、みーつけた
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