言うことをきかない、この揺れ、この熱

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やや混み合った朝の電車。 座席は全て埋まっていて、座席前の吊り革にはほとんどの人がしがみついていて触る事さえできない。 そんな中、停車駅であいつが乗りこんできた。 カズハ。 最近、気になる奴。 「よぉ」 「あ!おはよう!」 「お前っていつもこの電車?」 「うん。いつもは前から3番目に乗るんだけどねー」 「そうかよ?まぁ俺はいつも気分だけどな」 ドアが閉まって電車がまた走りだした。 そいつが乗ってきた駅でかなり人が増えて、カズハは揺れに耐えられるようにどこかに掴まろうとした。 俺はドアの前のやや高くなった吊り革。 カズハは手を伸ばして俺の横の吊り革を掴んだ。 ぐらぐら。 カズハは吊り革に捕まったものの、背が小さいせいか不安定で、今にもこけそうだ。 …若干、可愛いと思ってしまったけどな… 届かないなら無理しなくて良いんじゃねぇのか? だからと行ってこの揺れに堪えられなくて倒れたら嫌だしな… 「・・・・っ」 俺は素早くカズハの吊り革を掴んでいる手をとった。 突然でびっくりしたのか、カズハは目を丸くして俺を見ている。 「ほら、ここ…掴んどけ」 そう言ってそのまま自分の吊り革を掴んでいるほうの腕にのせた。 ちゃんと掴みやすいように腕を直角に曲げて… するとカズハは怖ず怖ずと手に力を入れた。 「ありがとう」 少し赤くなった笑顔。 俺の体温は一気に上がった。 「ばっ…!……別に、礼言われるほどじゃねぇし…」 やばい… 今、ぜってぇ目合わせられねぇ… 目的地までは後4駅。 それまで俺の体温がどこまで上がるのか… …気づかれませんように… .
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