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「ねぇ、指切りしよっか?」
「はぁ?なんでだよ」
「なんとなく」
「なんとなく?」
「うん」
約束事はあなたには言えない。
だってこれは私があなたに誓う事であって、あなたにこの誓いを押し付けたくないから。
「…しゃーねぇなぁ。分かったよ」
そう言って絡み合った小指はやけに弱々しく見えた。
指を絡ませたまま、三回ほどゆっくり振った。
速さにしたがって手と手は何百個みたいに見えた。
誓いをするように、はたまた願事をするように。
そして祈るように、私は目を閉じた。
「おい、指切りおわったぞ」
「…うん…」
指切りが終わったのにもかかわらず、私は指を離す事ができない。
この指を離せば、もしかしたら私は不安に押し潰されるかもしれない。
…何か言わなきゃ。
だけど言葉なんて出てきやしない。
喉からかすりでる空気をなんとか言葉にしようと、一生懸命お腹に力を入れてみる。
「…ずっと、傍に、いるよ」
それはさっきの誓い。
「ずっと、『淋しい』なんて思わせないよ」
ちぎれそうな心と、私の小指はとても良く似てた。
「…ありがとな」
彼の淋しそうな微笑みを見ると、思わず小指を離してしまった。
心もちぎれたみたい。
痛くて、冷たくて、悲しくて、切なくて。
「…フラれたからって、いつまでもクヨクヨしてらんねーよな」
「………」
淋しそうな笑顔のまま、私に背をむけた。
そして前へと進むように、両手を力強く握ったり開いたりした。
「お前みたいな親友がいて良かったよ」
「…そっか」
あなたの背中は羽がついてるみたいで、とても眩しい。
「なぁ」
「ん?」
「手でもつなぐか」
「なんで?」
「なんとなく」
「なんとなく?」
「おう」
二人の手がつながる事、きっとこれが最初で最後。
…指切りげんまん。
あなたに心の中の本当の願いは打ち明けなかった。
これからも打ち明ける事はない。
だけど誓うよ。
ずっと守るよ。
ずっと、ずっと、ずっと。
あなたを好きでいます。
ずっと遠い「いつか」がきても
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