いない筈の隣人

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いつの間にか眠っていたようで、 母から起こされて、目が覚めた。 母は不思議そうに俺を見ていた。 「どうしたの、お母さん?」 と俺が聞くと、 「そのオモチャはどうしたの?」 と、俺が大事に抱えていた新幹線のオモチャの事を聞いてきた。 「隣のお兄ちゃんから貰ったんだよ」 と答えると、 母は、ますます不思議そうな顔をして、 こう言った。 「隣って、あなた以外に、誰もいないわよ」 と。 そう、俺の病室は、確かに相部屋だったのだが、 その時、病室には俺以外、誰もいなかったのである。 その時、院長先生が様子を見に来て、 俺が持っている新幹線のオモチャを見て、 青ざめていた。 その場では、その事に触れなかったが、 それから何年か経って、 母に当時の事を尋ねると、 母は言いにくそうに答えた。 「院長先生の話によるとね、あなたにオモチャをくれたっていう男の子は、 あなたが入院する2年前に亡くなっていたそうよ」 と。 院長先生が言うには、 その男の子は、俺よりも重い病気を患っていたらしく、 手術の甲斐もなく亡くなってしまったそうだ。 そして、その男の子が大事にしていたオモチャが、 俺にくれた新幹線のオモチャだったそうだ。
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