序章

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人が死ぬのを見るのは慣れている。 ―――そう思っていた。 でも、目の前の『なにか』は人間だけど、…人間じゃない。 足が震えて動けない。 血の臭いに吐きそうになる。 浅葱の羽織を着た『なにか』は獲物を私に変えたようだった。 返り血に染まった手を舐めながら私を見る。 逃げなくちゃいけないのは分かっている。 でも怖い。 足が動かない。 この間にも笑いながら刀を振り上げる『なにか』。 月光に照らされた白刃を見ながら生を諦めたその時。 びしゃりと熱く生臭い物が顔に掛かる。 それを手で拭き取ると赤黒いぬるりとした血。 「ひっ…!」 「凛ちゃん!?」 悲鳴をあげるよりも先に友の声がした。
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