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その時、不意に影が差した。
「え…?」
なびく漆黒の髪に息を呑む。
降り注ぐ月の光が私には何故か、舞い散る花びらを思い起こさせた。
狂い咲きの桜のよう――。
「運のない奴だ……。」
氷の様な静かで冷たい声。
月明かりに照らされた端整な顔。
今、まさに私を殺そうと白銀に煌めく刀を眼前に突きつけられてるのにも関わらず。
私は怒っているような困っているような瞳に目が離せなかった。
「いいか、逃げるなよ。背を向ければ斬る。」
脅しではないと分かるその言葉に頷いたのを見ると、彼は眉間に皺をよせ刀を納めてくれた。
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