「明日が聞こえる」

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だけど、そうじゃなかった。 今回の肩の力が抜けたような声、その理由は、声の射程にあったんだ。 声の射程。どこをめがけて声を出しているか。 今までの叫ぶような声、 それは誰もいないような空の高く高く、 あるいは遥か彼方にいる、「決して届かない君」、 もしくは空に映した自分自身、 そう言ったものに向けて放たれていた。 もっと遠くへ、もっと強く。 どこまでもどこまでも、貫くように。 ひとつだけ大きく歌い方の違う、「時計」の場合は、 その声が向けられていたのは「自分自身」に他ならない。 ひたすらに音の完成度を突き詰めて、内へ内へ。 自分自身の、奥深くへ。
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