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教卓の前に立つと、担任は元気な声を張り上げる。
「さぁお前たちが待ちに待った夏休みが来たぞ!」
担任のその声に、一部の生徒達が「よっしゃぁ!」と叫び声をあげる。
「でも、きちんと夏休みの宿題だけはやれよ! お前たちの為にたっぷり宿題を作ってきたんだからな!」
次はブーイングの嵐。
全く、よくもまぁそんな事に一喜一憂出来るものだ。
リオンとの訓練と、宿題の事を考えたら、憂鬱で仕方がないというのに。
今年の夏休みは多分、休みなんて無いだろうなぁ……。
と、内心憂鬱な溜息を吐いているファイは、頬杖をついて真夏の日差しが差し込む外を眺める。
「それと危険な事をするなよ。こないだの試験の時みたいな、不測の事態だって起こる可能性があるんだからなぁ」
間延びした声で、担任はそう言う。
それにしても、普段の担任は凛とした美しい女性だというのに、最近の彼女は表情に締まりがない。
丁度、あの試験の後からだろうか。
リオンが崩天のルシフェルとして、彼女の前に現れて、直接治療を行った後から、だったような気がする。
やはり、崩天のルシフェルに間近で会話をして、更には治療をして貰ったのが、大きかったのだろう。
それが彼女の隠されていた乙女心を、くすぐったのでは無いだろうか?
幼少時の憧れの存在ともいえる、彼と直接話したのが、余程うれしいのだろう。
まぁ、憧れとは言っても、年齢を考えれば、中年のオヤジか、初老の男性である事は大きいのだが。
そもそも、実年齢を知っているファイにとっては、彼に恋愛感情を持つことは自滅するようなものであると知っている。
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