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軋む階段を何とか登り終え、僕らは二階にたどり着いた。
先ほどの電源はこちらには作用していないようで、外の明かりだけが視界を支える。外はいま夕方と夜の境界にあって、いよいよ暗くなる、そんな気配を漂わせている。
「電灯使う?」
「ああ、頼む」
懐中電灯を受け取り電源を入れる。簡易的なもので光量は少ないが、無いよりはマシだろう。前方を照らす。
するとそこには大型の冷蔵庫があった。それも三台。階段、つまりこちら側を正面に置いてある。近付いてみると、かすかにだが冷蔵庫独特の駆動音が聞こえた。
稼働しているようだ。
裏側に回り込んでみると、コードは床伝いに壁まで延びていて、それはさらに床の下へと続いている。一階にあった蛍光灯とは別の経路で電気が通っているようだった。
「これが見せたいモノ?」
階段側から動かない夜口。電灯だけはこちらを照らしている。
「厳密にはその中なんだよね。わたしもどうなっているのか見たいから、開けて」
夜口は微笑みながら言った。口調からは命令のような強いものを感じないので、これは単純にお願いだろう。
「危険なモノじゃないだろうな?」
「あら、怖いの?」
僕は夜口の顔に光を当てる。
「冗談だってばー。大丈夫、身の安全は保証するわ」
もう一度冷蔵庫の正面、扉がある方に回り込む。冷蔵庫自体はそこまで古くないようで、目立った汚れや傷は見当たらない。
汚れや傷は、だけど。
制服のポケットからハンカチを取り出し、それで手を覆ってから取っ手を掴む。力を込めて引くと、扉は簡単に開いた。開くごとに漏れる明かりと冷気。
それと、匂い。
強烈な腐敗臭が鼻孔を衝く。たまらず左手で鼻と口を覆った。それでも右手を離すことはなく、扉は開いていく。
「……」
そこには死体があった。若い女性の裸体で、膝を抱えながらピタリと収まっている。
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