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「ねえ橘くん」
「なに?」
「こっちの冷蔵庫も見てみたいと思うの。昨日来た時には何も無かったんだけど、一日経つし、もしかしたら――」
夜口は三台あるうちの真ん中の冷蔵庫に手をかけた。
「好きにしなよ」
僕の言葉を聞いてかどうかは分からないけど、冷蔵庫の扉が開かれる。
謀ったように死体は置かれていた。
最初と同じように女性で、裸体だ。こちらも膝を抱えてうずくまっている。
「被害者が増えちゃった」
「……嬉しそうだな」
「そんなことない。同じ女性だもの、同情くらいするよ」
ならどうして最初の死体を発見した時点で通報しなかったんだ? そうすれば少なくとも二人目の被害は防げたんじゃないか? ――とは言わなかった。
そんなの同情より好奇心が勝っただけの話だ。夜口にとって、警察に通報することで得るものはない。メリットがないのにわざわざ動くわけがない、それだけのことだ。
「目はどうだと思う?」
「……分かんない。ちょっと待って」
よほど死体への抵抗が少ないのだろう、夜口は何の躊躇いもなく瞼を押し上げた。
「あれ?」
夜口が意外そうに首を傾げる。しっかりと眼球は残っていた。在るべき姿をして、在るべき場所へと収まっていたのだ。
「まだ取られてない、と考えるべきなのかしら」
「さあ。そんなの犯人にしか分からないだろう」
「そうね。その通り」
夜口は扉を閉め、ゴム手袋を脱ぐ。ビニールに入れて封をしてからバッグへと仕舞った。
「そういえば――」
夜口が僕を見る。
「今日の用事って何だったの?」
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