case1.蒐集家の目

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〈2〉  死体発見の次の日、土曜日。僕は夜口から連絡を受け、町に一つだけある図書館へと来ていた。  携帯電話に届いたメールはおよそ普段の彼女からは予想できないような可愛らしいもので(絵文字、顔文字が多様されている)、心底驚かされた。そのメールによってというわけではないのだけど、僕はその呼び出しに応じて図書館にいるのである。  当の本人は約束の時間を過ぎても来ていない。 「……」  昨日の今日で会うことになるとは。つい数日前までは名前すらろくに知らないただのクラスメイトだったのに、随分と懐かれてしまった。   それもこれも、この図書館から始まったんだ。この何の変哲もない図書館で。  僕の日常をあっさり引き裂いて、無理やりに介入してきた存在。厄介なものと出遭ってしまったと、今でもそう思う。きっとこれからもそう思い続けるのだろう。  携帯で時間を確認する。  待ち合わせから二十分経っていた。図書館の中は冷房が効いているので待つことは苦にならない。女性は身仕度に時間がかかるものだし、気長に待とう。  そう思った矢先、 「お待たせ」  後ろから声を掛けられた。何の気無しに振り向いて、「……」、戦慄。 「どうしたの? もしかして怒ってる?」  夜口ねこは私服だった。
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