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スカートの端や腰回りにフリルがあしらわれた黒いワンピースに、脚をこれでもかと綺麗に見せる黒いニーハイ、肩から提げられた黒いポーチは可愛らしく、いいアクセントになっている。
その黒の間から出る肌が透き通りそうな程に白いので、服との対比でより栄えて見える。そして完璧な造形の顔がトドメとなって、最早それは非の打ち所のない完全体だった。
究極ではなく完全。全方位型の美が、今、目の前に。
……僕は一体なにをここまで描写しているのだろう。少し死にたい。
「橘くん大丈夫? 冷房が効きすぎて頭が悪くなってしまったのかしら」
「それが痛くなったの間違いであることを祈るよ」
先ほどまでの僕は痛かったけれど、それはまあこちらの話だ。
「それよりそんなところに立ってないで座ればいい」
僕はテーブルを挟んで向かいに座るよう促した。促したつもりだった。不思議なことに夜口は迷いなく僕の隣に座った。
「ありがと。では改めて、待たせてごめんなさい!」
夜口が潤んだ瞳を向ける。
「いや、それは構わないけど、なぜ隣に?」
距離は肩が触れ合いそうな程に近い。僕の目線からちょうど夜口の胸の谷間が――見える程もなかった。
「隣に座った方が緊張しないかなあと思って。それに触りやすいしね」
「その触ることを前提に考えた位置取りはどうかと思うけど」
思春期の女子高生が触るとか言うな。相手だって思春期なんだぞ、と僕は叫びたいのを我慢する。
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