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そもそも夜口だって立派な今時の女子校生だ。学校では静かだけど、色々なところにそれなりの交流はあるだろう。そういう面を僕には見せたくないのかもしれない。
自分の中でそう締めて、会話を再開した。
「それで頼みたいことというのは?」
「単刀直入に言うとね――犯人を一緒に捜して欲しいの」
夜口は真剣だった。どこにも冗談の様子が無くて、僕は隙を見いだせない。
「昨日きみに見せた二つの死体。殺人現場。その犯人を捜したいのよ」
「なぜ?」
「……単純に、あの死体を作った犯人を見てみたいって感じかな。気にならない?」
夜口は頬杖をつきながら、まるで意に介さないといった感じだ。事も無げに死体を作ったなどと言うところにも違和感を感じる。
「単なる興味ならやめておいた方がいい。人をあんな風にする奴だし、それに――」
「それに?」
「君はあの二人によく似ている」
或いは、あの二人が夜口ねこに似ている。冷蔵庫に収められた死体はどちらも長い黒髪で痩せ型。そして何より美人だった。
あの死体を最初に見た時、僕は夜口ねこを思い浮かべた。それほどに似ているのだと思う。
夜口は笑った。
場所を気にしてか口を手の平で隠しながら笑っている。
「それなら好都合ね。偶然ではなくて、犯人がそういう人間を狙っているのだとしたら、それはとても単純で、とても素敵だと思う」
「――っ、夜口、君はまさか!?」
「ねえ、橘くん。協力してくれる?」
思考が鈍るのを感じる。目の前の夜口の言動に、すっかりやられてしまったようだ。
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