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教室を抜け、校舎を抜け、夕日でオレンジ色に染まる空間を二人並んで歩く。
地面に映る長い影が、すぐ隣に彼女がいるのだということを伝えている。
部活中なのだろう、ジャージを着た生徒が何人も影を踏んでいった。
途中、帰宅部である僕らに対してなのか、或いは二人でいることに対してなのか、怪訝な表情でこちらを見る生徒もいた。
何となく居心地が悪くなって夜口の方を向いてみるも、彼女はただただ微笑むだけだった。
今回の案内人である夜口は教室を出たきり無言で、会話はもちろん皆無だった。何か思うところがあるのかもしれないし、ただ無口な奴なだけかもしれない。
よく分からない。
そんなよく分からない夜口は僕の思考などまるで気にしていないようで、一定の速度を保って歩いている。
校門をくぐり抜けると新旧入り混じった住宅が立ち並んでいる。
夜口は慣れた感じで学校を囲うフェンスに沿って左に曲がった。
僕の家は校門を出て右に曲がらなければいけないので全くの逆方向だが、この際仕方ない。
明日は土曜日で休みだ。
今日少し帰るのが遅くなったとしても、特に日常に影響は及ぼさないだろう。
それにしても、放課後デートと言えなくもない状況のはずなのに、殺伐と気まずさが渦巻く空間がここにはあった。
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