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鳥の鳴き声が聞こえる。
朝か。アラームが鳴っていないが、時計を見ると、もう午前六時……五時には起きたかったんだが。
そうだ携帯が壊れていたんだ。
だからアラームが鳴らなかったようだ。目覚まし時計は買うべきだな。
「んん、あ」
全身を伸ばして体の硬直をほぐし、リラックスする。その行為の後、まな板に包丁をリズミカルに叩く音に気付いた。
なんだ、学校が母に連絡していたのか? そうだよな、普通なら連絡するよな。
キッチンまで歩いて声をかける。
「母さんか?」
「あ、起きましたか?」
えもいえぬ戦慄が、私の体を稲妻のように足先から頭まで全力で爆走した。
なぜだ? なぜ、九該がここにいる?
「ご飯食べますよね?」
いや食べるが、学校に行く途中にパンなりおにぎりなりを買うから、九該が一々作る事もないんだが。
「何をしている?」
色々聞きたい事はあったが、とりあえずそう聞いた。
「ご飯作ってます」
確かにそうだな。質問が悪かったか。
「なぜここにいる?」
「好きだからです」
多分、答えになっていない。
もういい。なにを言っても無駄だ。面白い経験をしてるとプラス思考しよう。
「あと、携帯買っときました」
どうやら本格的に逃げられなくなったようだ。
笑える。
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