序章

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家までは30分は掛かる。 暇を持て余した俺は手に持っていたノートパソコンとイヤホンを取り出して、最近ダウンロードした映画を見る事にした。 しばらくは俺の中だけの時間が続く。 すると モニターに注目する俺の鼻先で フワリと良い香りが…。 『なんや!?』 不思議に思い視線だけを上げてみると、隣の女の子が瞳をキラキラさせながら バスの車外に目を向けている。 その不意の横顔に俺は一瞬ドキッとした。 『近くで見ると…えッらい色白な子やなァ~』 『すっぴんでこんだけやったらガチ化粧したら美人なんやろな~』 思いつつ 俺も女の子の見る車外に視線を移した。 「おぉ♪久しぶりに見たけど、やっぱ綺麗やな」 車外には数十メートルに渡って 垂れ桜(シダレザクラ)と梅の木の並木道が続く。 この並木道は日茂市で 一番のスポットになっていて初春の訪れと共に 梅と垂れ桜のコラボが見れる事で有名な場所。 今は晩夏 梅と桜には花は付いていないけど 青々した葉が 残暑の陽の光を浴びている。 「…ですよ。私もそう思うわ」 女の子の小さいけど ハッキリとした 俺の言葉に対する相槌の声。
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