18人が本棚に入れています
本棚に追加
家までは30分は掛かる。
暇を持て余した俺は手に持っていたノートパソコンとイヤホンを取り出して、最近ダウンロードした映画を見る事にした。
しばらくは俺の中だけの時間が続く。
すると
モニターに注目する俺の鼻先で
フワリと良い香りが…。
『なんや!?』
不思議に思い視線だけを上げてみると、隣の女の子が瞳をキラキラさせながら
バスの車外に目を向けている。
その不意の横顔に俺は一瞬ドキッとした。
『近くで見ると…えッらい色白な子やなァ~』
『すっぴんでこんだけやったらガチ化粧したら美人なんやろな~』
思いつつ
俺も女の子の見る車外に視線を移した。
「おぉ♪久しぶりに見たけど、やっぱ綺麗やな」
車外には数十メートルに渡って
垂れ桜(シダレザクラ)と梅の木の並木道が続く。
この並木道は日茂市で
一番のスポットになっていて初春の訪れと共に
梅と垂れ桜のコラボが見れる事で有名な場所。
今は晩夏
梅と桜には花は付いていないけど
青々した葉が
残暑の陽の光を浴びている。
「…ですよ。私もそう思うわ」
女の子の小さいけど
ハッキリとした
俺の言葉に対する相槌の声。
最初のコメントを投稿しよう!