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「え…」
たしかに聞こえた
その言葉に
俺は一瞬戸惑った。
だけど
女の子はバスが並木道を過ぎると何事もなかった様に席に座りなおしたんだ。
《次は日茂二丁目~、日茂二丁目です。お忘れ物などなさいませんように》
バスの降車ランプが点滅すると
その子はいそいそと荷物をバックにしまい込み
降車口に歩き出した。
さっきの出来事で
ちょっと気に掛かった
俺は
彼女の後ろ姿を目だけで追う。
プシュー
降車扉が開き
何人かの客が降りた後
彼女も降りたのだが…
一瞬だけ
俺の方に目を向け
微笑んだ。
……ような気がした。
『ハハッ…まさかな!』
『運命の出会いってか!?ドラマじゃあるまいし…………んな簡単に出会いあるんやとしたら…この世は運命の出会いだらけやないか!!アホくさッ』
ちょっと揺れた
自分の心を完全否定するように
俺は頭の中で言い聞かせていた。
それが
後に名前を知る事になる
茅野咲希
彼女と
俺と
の
初めての出会い。
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