あのね....

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……伝えたいことがあるのです ずっと、もうずぅっと 3年前、雨の中で震えていた私を抱きしめてくれた彼。 その手がすごく暖かくて、ずっとこの手についていこうって決めた それから彼は、私を家に連れていって暖かいタオルで私の体を拭いてくれた 「お前、独り?」 そうしながら彼は、私の目を除きこんだ 『………』 私がそれを肯定するように顔を背けると 「そっかぁ。俺も独りなんだ」 そういって、彼は笑った その笑顔が寂し気で、いとおしくて…… 『大丈夫だよ。私がいるよ』 安心させたくて抱きつこうとしたのに、私の手は彼まで届かなかった。 ――――伝えたいこと、それは……… 『好きです』 ―――だけど、それは叶うことのない夢なのです だって、私は…… 私は独りぼっち。彼も独りぼっち。 彼は私を家においてくれた 1日の始まりと終わり…… 一番に見るのは、君の顔 寝る時は、一緒のベッドで眠り 起きたらまず「おはよう」って私をぎゅっと抱きしめてくれる 私はそれが嬉しくて… とても幸せだった。…『だった』、過去形 ――ある日、彼に彼女ができたんだ 「俺、彼女ができたんだ」 私の気持ちなんか知る由もない彼が、頬を上気させていう ――そんなこと、報告してくれなくていいのに それから彼の話は、彼女のことばかりになった ――もう、一緒に寝てくれないの 「おはよう」ってぎゅっとしてくれないの …仕方ないよね だって、だって私は――
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