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『今日未明、加賀美製薬会社社長、加賀美 英作氏が殺害されているのが発見されました。死因は頭部への発砲によるもので…』
朝、テレビにはこのニュースが流れていた。
「またこれ…」
パンを食べながら、憂鬱そうに画面を見る。
――何だよ、その反応。もっと喜べよなぁ。この俺がかっこよーく始末したんだからさぁ
頭の中から声が呼び掛けてくる。
――…銀、それとも疲れてんのか?
心配そうに聞いてくる声に言葉を返す。
「大丈夫だよ。鉄こそ大丈夫なの?」
少年―銀は声の主、鉄を案ずる。
――まだまだ暴れ足りない位だ!
鉄は笑いながら言った。
銀は、一般的に言う多重人格者だ。
もう一つの人格は鉄と言い、主に夜に活動し、夜に生きる人格だ。
銀が五歳の時に生まれ、今日まで一緒にいる。
銀は右目に包帯と言う痛々しい姿をしている。
それ以外はこれと言った特徴はない。
髪は漆黒に近い黒。
見えている左目も光を包み込む闇のように黒い。
その包帯を除けばそこら辺にいる高校生と変わりない。
そして鉄はその包帯の中…否、右目の中に存在しているようなものだ。
銀は夜になれば包帯を取る。
仕事をするためだ…。
包帯で隠れている右目は左目と違って紅い。
例えるならば血だ…。
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