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やっとの事、店に戻るとマネージャーがアキラの元へやって来た。
「心配してたよ。何かあったかと思って…」
肩を抱き寄せ小声でアキラに囁く。
それでなくても、他の子のように割り切ってこの仕事についたわけではないアキラを、少なからずマネージャーは気にかけていた。
「ごめんなさい…、あ、あの、お金はちゃんと貰いました。」
アキラは覚束ない手つきで財布を出そうとする。
マネージャーはそれを優しく制した。
涙の痕を付け憔悴しきった様子のアキラの背中を痛ましそうに、慰めるように優しく撫でる
「それは後でいいから、君にお客様だよ。携帯を落としたろ?」
「…え?」
「拾って下さった方が君に会いたいと待ってる。お礼を行って来なさい。」
そう言われて、思い浮かぶのはさっきアキラが冷たく接したあの人
「…はい。」
アキラは小さく返事をした。
「その前に…」
マネージャーは保温機から温かいお絞りを出して、子供にするようにアキラの顔を拭いて、髪を軽く手で払って整えた。
「大丈夫、綺麗だよ。」
にっこり、安心させるように言った。
マネージャーに案内されテーブルに近づく。
目に入ったのは、所在なさげな紳士
紳士はたくさん来るけれど、この人は
思ったところで目があった。
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