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柳本はアキラと視線が合うとぎこちなく無理やり笑顔を作った。
明るい場所で見るアキラは、本当に美しい。
スラリと背丈はあるが、まだ大人になり切れていない体つき、幼い顔立ち、白い肌にほんのりピンク色の頬
だが、瞳はあどけない表情を裏切って暗い闇を湛えていた
「君のだね…?」
アキラが席に座り、マネージャーが去ると柳本はアキラの前に携帯を置いた。
「ありがとうございます。」
携帯を手に取り確かめると、アキラはぺこりと頭を下げた。
「良かった、届けられて」
君はずいぶんと落ち込んでいたようだからね。
柳本はホッとして穏やかに笑う。
満足した風な柳本の笑顔に、アキラは益々自分の取った態度を後ろめたく思う。
謝った方がいい?
でも、ほじくり返したくはない…
もじもじして、目線を上げるとまた柳本と視線が合う。
柳本は今度は困ったように笑う。
こういう場所で、生徒以外でこんな若い子と、何を話せば良いのだろう。
一方、アキラもよくわからなくて、何か話した方がいいのかと、イマイチ使い方の判らない気を使おうとする。
ふと目の前の綺麗な色のカクテル
「飲まないの…?」
柳本の前に置かれたまま
「ん、ああ…実は、車で来てることを忘れてて…。そうだ…、君も何か飲まないか?そうだよ、気が利かなくて悪かったね。」
柳本は苦笑いしながら、手を上げボーイを呼ぼうとする
「あ…、」
アキラは思わず声を出した。
「なに?」
柳本は上げかけた腕を下ろした。
「あの、飲まないなら…僕それがいいです。」
「…え?これかい?」
不思議そうに柳本が尋ねる。
「だって、勿体ない…」
アキラはウットリと綺麗なカクテルを見ながら呟いた。
「…え?」
言ってからハッとして、アキラは恥ずかしい気持ちになる。
うわ…、僕…、
顔が見る見る赤くなった。
お金持ちのこの人は呆れてるだろうか…、恐る恐る、顔を見る。
柳本は予想に反して、満面の笑み
なんて可愛らしい事を言うのだろう。
「そうだね、確かに勿体ない。これは君にあげる。僕はジュースでも貰おうかな。」
柳本は、久しぶりに気持ちが高揚するのを感じながら、再び手を上げボーイを呼んだ。
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