12/24
前へ
/35ページ
次へ
柳本はアキラと視線が合うとぎこちなく無理やり笑顔を作った。 明るい場所で見るアキラは、本当に美しい。 スラリと背丈はあるが、まだ大人になり切れていない体つき、幼い顔立ち、白い肌にほんのりピンク色の頬 だが、瞳はあどけない表情を裏切って暗い闇を湛えていた 「君のだね…?」 アキラが席に座り、マネージャーが去ると柳本はアキラの前に携帯を置いた。 「ありがとうございます。」 携帯を手に取り確かめると、アキラはぺこりと頭を下げた。 「良かった、届けられて」 君はずいぶんと落ち込んでいたようだからね。 柳本はホッとして穏やかに笑う。 満足した風な柳本の笑顔に、アキラは益々自分の取った態度を後ろめたく思う。 謝った方がいい? でも、ほじくり返したくはない… もじもじして、目線を上げるとまた柳本と視線が合う。 柳本は今度は困ったように笑う。 こういう場所で、生徒以外でこんな若い子と、何を話せば良いのだろう。 一方、アキラもよくわからなくて、何か話した方がいいのかと、イマイチ使い方の判らない気を使おうとする。 ふと目の前の綺麗な色のカクテル 「飲まないの…?」 柳本の前に置かれたまま 「ん、ああ…実は、車で来てることを忘れてて…。そうだ…、君も何か飲まないか?そうだよ、気が利かなくて悪かったね。」 柳本は苦笑いしながら、手を上げボーイを呼ぼうとする 「あ…、」 アキラは思わず声を出した。 「なに?」 柳本は上げかけた腕を下ろした。 「あの、飲まないなら…僕それがいいです。」 「…え?これかい?」 不思議そうに柳本が尋ねる。 「だって、勿体ない…」 アキラはウットリと綺麗なカクテルを見ながら呟いた。 「…え?」 言ってからハッとして、アキラは恥ずかしい気持ちになる。 うわ…、僕…、 顔が見る見る赤くなった。 お金持ちのこの人は呆れてるだろうか…、恐る恐る、顔を見る。 柳本は予想に反して、満面の笑み なんて可愛らしい事を言うのだろう。 「そうだね、確かに勿体ない。これは君にあげる。僕はジュースでも貰おうかな。」 柳本は、久しぶりに気持ちが高揚するのを感じながら、再び手を上げボーイを呼んだ。 ・
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1116人が本棚に入れています
本棚に追加