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遊び慣れした人ではなさそう。
この怪しげな店内で、自分と同じように居心地の悪さを感じている柳本にアキラは不思議と安心した。
今まで張り詰めていた気持ちが緩んで、アキラはカクテルを無意識にクイッと一気に飲む。
美味しい…
さっきまでの、頭痛と吐き気が嘘みたい。
顔が綻んだ。
「口にあったようだね、良かった。」
柳本はアキラが和んだ表情をしたのを見てホッとしたように言う。
なんといっても、あの泣き顔を見てしまった後だ。
「何でも頼んで良いんだよ?」
優しい笑顔
「あ、いえ…」
口ごもっていると
グルル…ル…
アキラの胃が生き返ったみたいに元気良く鳴った。
体って正直だ
安心した途端、欲求が素直に出て、アキラは恥ずかしくて顔を赤らめる。
僕、もうなんだか、ホントにいやしんぼみたいだ…
「ハハ…お腹空いたね?ご飯食べに行こうか。僕もまだなんだよ。」
「あの、でも…」
「大丈夫、ここのシステムは先ほど聞いた。心配いらないよ、美味しいものを食べて、…映画を見るのも良いし、ドライブに行くのも良いね。」
まるで初めてのデートのようなプラン。
柳本は、立ち上がり帰り支度をする
その後は…?
その後は、僕を抱くの…?
掠める不安
アキラの表情が曇る
「何もしやしないよ…」
柳本は、見透かしたようにアキラを優しく見下ろした。
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