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人を金で買う。
抵抗はあるが、このまま帰れば、この子はまた誰かに抱かれるんだろう。
店内を何気に見渡すと、客は一人でやって来て席につくのもそこそこに、男の子を品定めし連れ立って出て行く。
柳本は堪らない気持ちになった。
「朝まで君の時間を買おう。」
綺麗事な言葉が薄っぺらで虚しい。
分かっているが、気の利いた言葉は見つからない。柳本は座ったままのアキラにそっと手を差し出す。
アキラはおずおずと柳本の手を取り立ち上がった。
柳本の車に乗せられて、流れているのは少し古い洋楽。
クラシックじゃないんだ
アキラは柳本の横顔を見る。
一体、何者なんだろう。
良く整った顔
格好良いというより綺麗と言った方がしっくりする。
色素が薄いのか白い肌に少し明るい色の瞳
落ち着いた声色の割に自信なげな話し方。
30才位?
サラリーマンには見えない
学者さん…?
「心配しないで、嫌な事はしないから。」
アキラの視線を不安から来るものだと感じて、柳本は安心させるように言った。
連れて来られたのは個室のある高そうなお店
渡されたメニューはよくわからなくて、眉間にしわが寄る
「肉と魚どっちが食べたい?嫌いなものはある?」
「え、あ…お肉…がいいです、嫌いなものはありません。」
「そう、僕が適当に頼んでいい?」
「はい、お願いします」
アキラはホッとしてパタンとメニューを閉じた。
柳本は慣れたようにオーダーをする。
「君、お酒はもちろん飲むだろう?シャンパンが良いかな、ワインが良いか、両方頼もうか?」
柳本は屈託ない笑顔をアキラに向け返事を待たずに何やらボーイに囁いた。
落ち着かない子供みたい
クスリとアキラは笑った。
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