第一章

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 * * *  嫌だ。もう耐えられない。必要なものは……もう準備した。僕は解放されるよう、もう止めてくれるよう『交渉』するつもりだ。  彼――石動皓(いするぎこう)は、いつもナイフを持ち歩いている。僕が逆らう意思を見せれば、ヤツはいつも逆上してそれをちらつかせる。  いつもはそれでひるむ僕だけど、もうひかない。それを逆手に取るつもりだ。覚悟はとうに出来てる。    ~中略~     僕が死んだら犯人は石動だ。そのことを明言しておく。誰も僕を救ってくれなかったのだから、手段はもう――これしかない。  僕の魂を救い、僕を救えるのは僕しかいないのだ。  参考までに、ヤツが僕にしてきた仕打ちを手記としてしたためておく。これと一緒に閉じておこう。これで、僕の言葉は絶対のものとして認められるのだ!  ☆ ☆ ☆  紗綾が集めた資料で、俺の興味を引いた事件は――世間的にはすでに解決されたも同然の事件である。だが、ひっかかるのだ。この事件は、奇妙な違和感がある。  確かに警察が示した見解に整合性は取れているし、矛盾もおかしい点も見当たらない。でも、ひっかかる。紗綾が選んだ事件だ、彼女もなんかの違和感を抱いたのだろう。
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