第一章

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 この事件を簡単に説明すれば、ここの近所の高校で日曜日に殺人事件があったというものだ。被害者は冨樫雄也。容疑者は石動皓。二人の関係はいじめっ子といじめられっ子という、簡単なものである。  死んだのがいじめられっ子のほうで、容疑者がいじめっ子。  公式見解では、冨樫雄也が、石動皓にいじめをやめるよう迫ったところ、自分が見下している相手に対等の態度を取られて逆上した石動が、普段から持ち歩いているというナイフを持ち出し、すったもんだの末に被害者の頸動脈を切ってしまった、と。  警察が詳しく調査するうちに、故冨樫氏がされてきたことの手記とずたずたに引き裂かれた内履き、落書きをされた教科書、破られた教科書、引き裂かれた教科書などなどの、石動氏の指紋つきの証拠品が見つかった。  石動氏はいじめのことは認めているが、殺人のほうは否定している。だが、ナイフからも間違いなく石動氏の指紋が検出されいるのだ。あとは、彼が部活後、一人で自主練をしていた時間と死亡推定時刻が一致している。  なるほど、彼を黒にするには十分すぎる状況だ。  しかし、確証はないけれど、殺したのは石動氏ではないかもしれない。それを、証明してみせる。ああ、実に面白そうだ。
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