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「紗綾、石動の親だ。息子さんの殺人無実を証明したくないかって、交渉だ。報酬は成功したときのみの払いで良い。金額は……紗綾が決めていい」
と、俺が言うと、紗綾は力強く頷いた。こいつは、料理の腕だけはほめられたものじゃないが、それ以外のスキルは高いのだ。
正直、俺みたいな最終学歴中学の探偵なんかが、契約をとることが出来るのは紗綾のおかげに他ならない。これで、愛想と料理の腕さえ良ければ最高なのだが……。
いや、愛想ないのは俺に対してだけか。あっはっはっは……はぁ。
肩をがっくりとおろすと、それに目ざとく気付いた紗綾はコール中であっただろう電話を切り、不安に彩った瞳に俺の姿をおさめ、
「ねぇ、無理してこれにする必要はないのよ……? 事件なんか、この世に掃いて捨てるほどあるんだから、別にあなたがやりたいことだけでも……」
珍しいこともあるもんだ。俺のことを心配してくれるとは。
うん、それだけで頑張れる気がしてくるんだから、俺の心はずいぶんと単純に出来ているようだ。何でも出来そうな気分である。
そう、今なら、パッ……『銀行』に行って高額の利子を受け取り、さっきの負け……いやいや、さっき貯金した分も卸せる(おろせる)かもしれない……ッ!
「紗綾、金貸してくれ、今なら、勝てる!」おまえの言葉パワーでな!
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