121人が本棚に入れています
本棚に追加
あれは、すでに事件の真相をつかみ、それを明かすこと、暴かねばならぬことに絶望した顔だ。頼まれたこれも、おそらくは裏付けのための物だろう。
「あんな顔……見たくないのに……」
1人呟く。『彼』には笑っていてほしいのだ、自分のそばで。それは昔も今も変わらない紗綾の想いだ。『彼』の望むことなら、なんだってしてあげたい。
だから、『彼』があの事件の後、意識を取り戻した後に学校をやめると言いだした時も、探偵をやると言いだした時も、文句を言いはしたけれど、それを心から否定はしなかった。まあ、給料をもらえない時は頭にくるけど。
『彼』がまた、心から笑えるようになるには、紗綾が一番見たいと思っている笑顔はあの殺戮者を捕まえた後でしか、見られないだろう。そもそも、『彼』はそのために探偵を始めたのだろうし。
まあ、今は、それでもいいだろう。あの化け物は、今は何のアクションも起こしていないから、当分は捕まえるどころか、情報を得ることすらできないだろう。だから、『彼』も何もできない。
それにしても、これは何の役に立つのだろうか。冨樫雄也のパソコンの使用履歴だとか、郵便とかの配達記録だとか。
「一番最後に使ったのはオークションか」しかも、それを落札している。かなりの高額で。
最初のコメントを投稿しよう!