第一章

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 なるほど。今日はこいつの給料日だったか。もっこり忘れてたな。ま、いいか。だって――、 「そんなの、いつものことじゃないか」  そう笑い飛ばしたら、また殴られた。  ☆ ☆ ☆ 「わるかったよ……反省してる……次こそはちゃんと、払うよ」  誠心誠意謝罪したのだが、「それはもう聞き飽きたわ」と幼馴染はばっさりと切って捨てた。  でも、と俺は思うのだ。こいつは株のデイトレートで一日で一千万は少なくとも純利益を出しているのだ。いまさら、俺が払う薄給などどうでもいいじゃないか。  勝手な愚痴を心中で述べつつ、幼馴染兼秘書をつぶさに眺める。  途中で数えるのは止めたけれども、少なくともこいつに半年は給料をやっていない。なのに、こいつの恰好は毎日違う恰好をしているし、爪や髪も手入れが行き届いている。  今日は、腰まで届く極上の絹みたいな黒髪をポニーテールにして、国お抱えの秘密諜報機関みたいな黒いスーツドレスを着こなしている。客が来る訳でもないのに、無駄に着飾っていると言わざるを得ない。  胸の大きさは嘆くしかないが(俺は貧乳派なので気にしないけれど)、顔立ちは見事の一言に尽きる。簡単に言えば、美女だ。
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