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大好きで大嫌い
オレが侑士に負けた。
潔くオレは合宿場から出ていこうとしていたのだが、侑士に後ろから抱き締められた。
「何すんだよ。」
「ごめんなぁ。一点ぐらい取らせたったらよかったな。」
そんな情けはいらない。
侑士はそんなこと分かってるはずなのにどうしてそんなことを言うのだろう。
「侑士は跡部と上を目指せばいいじゃん。オレが氷帝レギュラーでいれたのはアクロバットとお前がいたからであってオレの実力はたかがしれてたし。」
「ほんま、ごめん。オレがここに残ったら岳人、寂しなるのに…」
自虐的になるオレをギュッと抱き締め、言った。
侑士の体温が伝わってくる。
暖かい…
「オレ、侑士のこと大好き。」
「うん。」
「一緒にダブルスできて嬉しかったし、ダブルス組めなくてもずっと側にいてくれた。」
「うん。」
オレは侑士の腕を掴み、侑士から離れた。
「だけど今は一番憎い。嫌い、大嫌い!!」
言ってはいけないことを言ってしまった。
別れるのが嫌で今でもここから去るのが嫌なのに何で言ってしまったんだろう。
「オレは、オレは侑士のことが大好きで大嫌いだ!!」
言い終わる前に侑士にまた抱き締められていた。
頬に涙が伝う。
「知っとるよ。知っとる。」
優しく言われると涙が止まらなくなる。
オレはただただ侑士が選抜に残ることを祈ってやるしかなかった。
終
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