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白い個室にベッドが一つ。
オレは愛しい君に花を届ける。
「岳人!今日は赤い花いっぱい買ってきたで。」
オレは花瓶に花を入れる。
「ありがとう、侑士。今日のは一段と綺麗だね。」
オレに微笑む岳人。
「先生から何か聞いた?」
「ちょっとずつやけど回復しとるって。」
…ゴメン。嘘。
ほんまは今、死んでもおかしくない状態やねん。
でも、コレを言うてまうとほんまに死んでまう気がして…
岳人の病気は治らない。
心臓にある弁が欠損しているから。
オレに金さえあれば移植と言う手もあったのに…
ほんま、ゴメン…
「…?侑士…泣いてんの?」
「えっ!?」
オレの頬を伝っていく雫。
「…なっ、なんでもないで!欠伸しただけや。」
これやと確実に怪しいな。
オレは顔を拭った。
「もういいよ、侑士。オレ、そんなに長くないんだろ?自分の事ぐらいなんとなく分かるよ。」
…岳人。
「オレが死んだらさ、ちゃんとした人と結婚しろよ!オレの事を引き摺ったりしたらただじゃ、おかねぇからな!!」
笑う岳人。
…ゴメンな、岳人。
「あかん。引き摺りそうや。」
オレは岳人に抱きついた。
暖かい岳人。
今だけ…。
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