シロツメクサ<約束>

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「ねえ。名前は何て言うの?」 「…犬夜叉」  その子は「良い名前だね」と笑って自分の手に触れてきた。 「僕の名前はー…」  長い爪が花びらをつかむ。 「…よう」 「あれ、君から顔を見せに来るとは珍しいね」 「…そうか?」  少年は驚いて自分を見下ろしてきた。 「覚えてくれてたんだね」 「約束したのはそっちだろ」 「そうだったね。ありがとう」  木の上から飛び降り、立ち上がる。 「…犬夜叉」 「ん?」 「君は変わったね」 「はっ。何言ってー」 「いいや、変わったよ。  何が君を変えたんだろうね?」  真剣な眼差しに心を見透かされているような気がした。 「君だけじゃない。  この地も、季節ごとに歳月を重ねるごとに変わっていく」 「そんなの…」  当然じゃねえか、と言おうとして目を見張る。 「僕は何も変わらない。  …いや、変われないんだ」  だって僕の体は…。 「もういい…何も言うな」  少年に触れようとした途端、その体は無数の花びらに  姿を変えた。 「先に逝って……待ってる」  ー約束だよ。 「ああ…」
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