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我々、射撃統制小隊がそれぞれの指揮車内で、ナ式誘導噴進弾を敵編隊へと誘導している時、その発射小隊では次発弾の装填作業が大車輪で行われていた。 ナ式誘導噴進弾の発射機は全部で九基有り、それぞれ三基づつが土塁によって三群に隔てられており、その一群三発が発射されると、直ちに装填作業に取り掛かるのである。 南国の炎天下での装填作業は重労働であり、大変な作業であったが、その苦労に見合うだけの戦果を挙げている事を、自らの誇りとしていたのであった。 この度は、先月の九州防空戦の時のような弾数の心配は無く、あれから一ヶ月の間にナ式誘導噴進弾は量産され、各発射機に対して六発づつ、それぞれの高射中隊に五十四発の予備弾が用意されていたのは言うまでもあるまい。 その発射小隊はそれぞれの射撃統制小隊から八百から千m離れた場所に配置され、四個高射中隊分三十六基の発射機からは約三十秒ごとにナ式誘導噴進弾が、灼熱の南国の太陽が光り輝く大空に向けて、絶えず発射されていった。 その光景はテニアン島のどこからでも見る事ができ、手空きの航空機整備員達などは、それが轟音をあげて登りゆく度に、声を挙げ手を叩いて子供のように喜んで眺めていたのである。
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