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「じゃあ、行こうか」
愛姫たちは着物の土埃を掃うと、町へと繰り出した。
まずは町の人間に屯所の場所を尋ねなければならない。
「愛姫…あたしたち、目立ってる?」
「着物着てるから、大丈夫じゃない?外国人には見えてないと思う……」
「だよね…。
でも、気のせいかな?
さっきから、町の人からすっごく視線を感じるんだけど…」
往来する人たちは、外国人でもない愛姫たちを見ては、振り返っていく。
身なりは着物に草履、普通の市民である。
着物は高価ではないと梓は言っていたが、それでもこの時代にくれば、高価な着物に成り代わる。
長い黒髪をハーフアップにまとめ、人を引き付ける美貌を持つ愛姫。
ぱっちりとした目元に、小さな顔。すらりとした身丈。
陽菜は肩まで伸びた、ゆるいウェーブがかったセミロング。
祖母にオランダ人を持つクォーターの彼女の眼は、透き通るような薄茶色だ。
たとえ着物が安物でも、それは彼女たちの持つ【美】を引き立たせるだけだろう。
違う髪型や、異色の眼を持つ彼女たちを見て、見つめずにはいられないのだ。
「早く屯所に行こう!」
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