□其ノ四□

7/20
2129人が本棚に入れています
本棚に追加
/746ページ
「じゃあ、行こうか」 愛姫たちは着物の土埃を掃うと、町へと繰り出した。 まずは町の人間に屯所の場所を尋ねなければならない。 「愛姫…あたしたち、目立ってる?」 「着物着てるから、大丈夫じゃない?外国人には見えてないと思う……」 「だよね…。 でも、気のせいかな? さっきから、町の人からすっごく視線を感じるんだけど…」 往来する人たちは、外国人でもない愛姫たちを見ては、振り返っていく。 身なりは着物に草履、普通の市民である。 着物は高価ではないと梓は言っていたが、それでもこの時代にくれば、高価な着物に成り代わる。 長い黒髪をハーフアップにまとめ、人を引き付ける美貌を持つ愛姫。 ぱっちりとした目元に、小さな顔。すらりとした身丈。 陽菜は肩まで伸びた、ゆるいウェーブがかったセミロング。 祖母にオランダ人を持つクォーターの彼女の眼は、透き通るような薄茶色だ。 たとえ着物が安物でも、それは彼女たちの持つ【美】を引き立たせるだけだろう。 違う髪型や、異色の眼を持つ彼女たちを見て、見つめずにはいられないのだ。 「早く屯所に行こう!」
/746ページ

最初のコメントを投稿しよう!