24人が本棚に入れています
本棚に追加
これは、瑠兎が眼鏡をし始めたころのお話。
ちょーど加浬がおにーちゃんから兄貴って言い変えたころのお話。
≪加浬(中等部一年)side≫
「んー……わかんないです」
おにー……じゃなくて、兄貴が言った。
視力が落ちたみたいで、今メガネ屋さんで視力検査中。
「えーっと、右0.6、左0.5ってとこですね」
「あらー結構落ちてるじゃないっ!」
結果を聞いて母さんが眉を寄せて言う。
「席が前の方だからそんなに不便じゃないんだけどなー……やっぱあった方がいいよねぇ?」
兄貴と母さんが話してる間、俺は眼鏡を見てた。
……あ、これ兄貴に似合いそう……
俺は、その眼鏡をひょいと持ち上げてみた。
上フレームの、黒縁眼鏡。
なんとなく兄貴っぽいかも。
「なになに、加浬が選んでくれるのーっ?」
「んー、似合うかもと思って……って、兄貴!話は終わったわけっ?!」
俺の後ろから声をかけたのは兄貴。
なんともまぁべったーな反応とか言っちゃだめだぞ……?
あわあわしてる俺の手から眼鏡を取りあげて兄貴はそれをかけると俺を見てにっこりとほほ笑んだ。
「ど?かっこいー?」
あぁ、ものすごく。
なんて答えるようなやつじゃないんだよ、俺は!
顔を少し赤らめながら顔をそらすと、「別に……」なんて可愛げもない返事をした。
「むー、じゃあ別のにしよーかなぁ……」
俺の言葉を聞くと、眼鏡をはずして元の場所に置こうとする。
俺は慌てて兄貴の手を掴んでそれを止めた。
……ん?なんで俺そんなことしてんの?
最初のコメントを投稿しよう!