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「広辞苑クラッシュ、パート2」
まさに一瞬の早業。
佐藤は机を踏み台にジャンプすると、そのまま空中で広辞苑を蹴り飛ばした。
「おぐふぁっ!!」
「Ver.佐藤雅義~っと」
広辞苑が、佐藤の腹部にめり込む。
勢い良く跳ね返ってきた自分の攻撃に、国見はバタリと倒れた。
終始のんびりとした口調は崩さずに、佐藤は悠々と着地した。
「決まったー。大丈夫か、秋那」
「あ、ありがと……」
ポカンとしていた秋那が慌てて礼を言うと、周囲から歓声が沸いた。
クラスの誰もが、佐藤の動きに見とれていたのだ。
「いやー、クニはこういう話題になると、どうも暴走しがちになる。いかんなー」
けらけら笑いながら言う佐藤は、相変わらず眠たそうな表情をしている。
外見からは想像のつかない俊敏な動きは、小学生の頃に習っていた空手からのものらしい。
何を隠そう、こう見えて佐藤は全国制覇を成し遂げた程の猛者なのだ。
「派手にやられたわね、国見くん……」
「今のは、アイツが悪いわ。男の嫉妬は見苦しいもんよ~? ねー、唐沢くん?」
秋那がそんな佐藤の技を、脳内でもう一度再生していると、二人の女生徒が近付いてきた。
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