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「え、僕に言われても」
「そうよねー。唐沢くんは嫉妬なんてしなさそうだし! ……それにしても」
あははと笑った少女は、秋那の腰に手を当て、撫で回すように動かした。
途端に秋那の顔が真紅に染め上がり、体がビクリと跳ねた。
「ちょ、ちょっと坂口さん!?」
「腰とか、本当に女の子みたいよねえ。あははっ、照れちゃって可愛いー。」
坂口は秋那の腰を撫でる手を止めず、ニヤニヤと笑いながら言った。
確かに少々肉付きが良くないとは言え、そこまで細いとは思えない。
自分の体を触っている坂口本人の腰の方が、よほど細くくびれているのに気付かないのだろうか。
「綾女、止めなさい。唐沢くんが困ってるじゃない」
坂口の後ろから二本の腕が伸び、秋那の腰から手を離させる。
秋那は素早く坂口から距離を取り、佐藤の後ろに隠れた。
「なによー、志穂だって触りたいクセに」
「バカ言わないで、立派なセクハラじゃない。唐沢くん、ごめんね?」
志穂、と呼ばれた女生徒は、坂口に代わって軽く頭を下げた。
項の辺りで結んだ髪が、頭の動きに連動してぴょこんと跳ねる。
秋那は一瞬遅れて、急いで女生徒の近くに寄った。
「菊原さん、謝らないでよ。僕は怒ってないし、坂口さんだって悪気があった訳じゃ」
「も────っ、可愛いわねー!」
「え? ちょ、待っ……きゃ────っ!!」
「あやめったら! もう!」
「おーおー、秋那モテモテだなー」
再び秋那を引き寄せた坂口、それから逃れようとする秋那。
坂口を止めようとする菊原、それを傍観している佐藤。
叫び声が叫び声を呼び、秋那の朝は過ぎていった。
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