街中の逃避行

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「なぁ、今度みんなで遊園地に行かねえ?」 そう国見が切り出したのは、放課後の教室の中でだった。 佐藤の広辞苑クラッシュにより気絶していた彼は、結局昼過ぎまで意識が無かった。 普通に話している所を見ると、特に異常は無いらしい。 (佐藤の拳は、殴った相手の記憶を飛ばした事もある) 「遊園地って言うと、再来週にオープンするアレかー?」 「ああ、確かにそんな話があったわね。ブルースカイだったっけ?」 佐藤と坂口の掛け合いを聞きながら、秋那は鞄に荷物を詰めた。 秋那も、その話は聴いた事があった。 柚稀が嬉しそうに笑って、チラシを見せてくれていたのだ。 ──確か……空色の城、ブルースカイ。 「それそれ。実は知り合いから譲って貰った、割引券があるんだよ」 国見はそう言うと、懐から五枚のチケットを取り出す。 それに書かれた「割引券」の文字に、坂口は目を輝かせた。 「でかした国見! よーし、行くわよ! もちろん志穂も行くわよね!?」 「落ち着きなさい、もう本当に……。私はいいよ。行ってみたかったし」 興奮した様子でまくし立てる坂口を宥め、菊原は苦笑いして言った。 秋那からすれば、仲の良い姉妹のようだ。 (勿論、姉は菊原だが)
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