街中の逃避行

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リビングから出た秋那は階段を上り、自室の向かいにある部屋の前で足を止めた。 二度、手の甲でノックする。 ──返事は無い。 「柚稀、入るよ?」 秋那は一呼吸置いて、妹の部屋の扉を開けた。 妹だからこそ慣れたとは言え、やはり異性の部屋に入るのは少し躊躇してしまう。 部屋に入ると、女の子らしい小物やぬいぐるみが目に入った。 白で統一された、カーテンや壁、棚にベッド。 そのベッドの毛布には、ちょうど一人分程の膨らみがあった。 「柚稀、朝だよ。起きなさーい」 布団の上からポンと膨らみを叩くと、僅かに身じろぎしたように見えた。 ……どうやら、まだ本格的に寝ているらしい。 「ゆーうーき、遅刻するぞー」 尚も声をかけ続けると、布団の中からもぞもぞと頭が這い出してきた。 自分と同じ、茶色の猫っ毛。 少しつり目がちの瞳は、まだとろんとしていて的を捕らえていない。 「んー……おこしてー……」 舌足らずな声と共に、今度は腕が一本這い出てきた。 秋那は苦笑いしながら、もう一本の腕も引っ張り出そうと布団を捲った。 表れた体の全貌に、感想を言うなれば──……「華奢」。 白い腕に、細い腰。 女性特有のふくよかさは無いが、線の細さは同世代のそれと比べても群を抜いているだろう。 タンクトップが捲れて、白い肌が露わになっている妹に、秋那は一瞬固まってしまった。
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