*+。いきなりの接近戦。+*

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恥ずかしい…。 小さくコクっと頷くと、いつの間にか目の前には、パンがあった。 美味しそうなサクサクなパン。 私がマジマジと見ていると、私の目の前にパンを差し出している本人がまた笑い出した。 「食べないの?」 「いいんですか?」 「いいよ、あげる。 まだそんなに腹減ってないし。」 「ありがとう。」 爽やかに笑ってくれるものだから、遠慮なく受け取り、一口食べた。 …なにこれ。 かなーーーーーーり美味しいんですけどっっ!! 「美味しいっ!! サクサクしてて、甘いの!」 興奮気味に、男の人に言うと、またクスクスと笑い出した。 「良かった。それより、毛布がとれかけてるよ。」 にこやかにそう言うと、私にすぐ毛布をかけ直してくれた。 「あっ、ありがとうっ。」 私、子供みたい…。 知らない人の前で恥ずかしいことをばかりしてるかも…。 私がパンをひたすら食べていると、その人は自分の鞄をガサゴソと探り出した。 そして、時計を出し、時間を見ると、「あっ、やばっ。」と言葉を吐く。 「…?」 パンにかぶりつきながら、その人を見てると、彼は急ぎながら荷物をまとめていた。 「ごめん!そろそろ帰らなきゃっ!!」 「あ、はい! 気をつけて下さいっ!」 その人は即座に日の当たる場所に出て、走っていき、すぐに見えなくなった。 「あー、名前…聞き忘れた。」 パンをゆっくり噛みながら、さっきの人のことが頭に浮かぶ。 素敵な人もいるもんなんだなぁ。  
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