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貴方には、帰るところがあるんだよ…?
早く帰って、お父さんとお母さんに抱き締めてもらってよ。
そんなボロボロな格好で帰って怒られちゃうけど……
おかえり、って笑って言ってもらえるから。
ギュッと温かい腕に包まれて…
貴方は1人じゃないんだよ、って言ってもらって。
優しく包まれて、幸せそうに目を瞑って……。
貴方は、ひとりぼっちじゃないから…―。
『ワタシハ…ヒトリボッチダヨ…』
だ、誰…!?
どこからか声がして、私は左右を見渡した。
人がいる気配はない。
幼い自分を見ても、喋れる雰囲気じゃない。
寒そうに身体を震わせて、小さく縮こまっている。
可哀相に……近付いて、助けてあげたい…。
私が足を一歩前に出そうとすると、また
『ダメダヨ…ワタシニチカヅイチャ…。アブナイカラ…ケガヲスル』
声が聞こえた。
しないよ…!
近付いても、触れても、怪我なんてしない…!
駆け寄りたかった。
今すぐ、駆け寄りたい…!!
駆け寄って、貴方はひとりぼっちじゃないって伝えたい…!
抱き締めて言ってあげたいのに……っ、なんで足が動かないの…っ!?
自分の足元を見ても、足には何も付いてないし、縛られてもいない。
でも、私の足は動いてくれない…!
動いてよ!動いてよ!
お願いだから…っ、あの子をひとりぼっちにさせないで…!
あの子の傍に…っ、私の傍に行かせて…!!!
『…こんな所にいた。さあ、行こうか』
フと、知らない男性の声が聞こえ、私はバッと顔を上げた。
目の前には、幼い私を抱えている知らないオジサン。
幼い私は、光を失っているような目をしていて、心がない人形のような顔をしていた。
知らないオジサンは、そんな私を余所に…夜の闇の森に消えていった。
幼い私を抱きかかえて…―。
『ワタシハ、ヒトリ』
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