*+。決められないの、私には。+*

4/14
前へ
/271ページ
次へ
貴方には、帰るところがあるんだよ…? 早く帰って、お父さんとお母さんに抱き締めてもらってよ。 そんなボロボロな格好で帰って怒られちゃうけど…… おかえり、って笑って言ってもらえるから。 ギュッと温かい腕に包まれて… 貴方は1人じゃないんだよ、って言ってもらって。 優しく包まれて、幸せそうに目を瞑って……。 貴方は、ひとりぼっちじゃないから…―。 『ワタシハ…ヒトリボッチダヨ…』 だ、誰…!? どこからか声がして、私は左右を見渡した。 人がいる気配はない。 幼い自分を見ても、喋れる雰囲気じゃない。 寒そうに身体を震わせて、小さく縮こまっている。 可哀相に……近付いて、助けてあげたい…。 私が足を一歩前に出そうとすると、また 『ダメダヨ…ワタシニチカヅイチャ…。アブナイカラ…ケガヲスル』 声が聞こえた。 しないよ…! 近付いても、触れても、怪我なんてしない…! 駆け寄りたかった。 今すぐ、駆け寄りたい…!! 駆け寄って、貴方はひとりぼっちじゃないって伝えたい…! 抱き締めて言ってあげたいのに……っ、なんで足が動かないの…っ!? 自分の足元を見ても、足には何も付いてないし、縛られてもいない。 でも、私の足は動いてくれない…! 動いてよ!動いてよ! お願いだから…っ、あの子をひとりぼっちにさせないで…! あの子の傍に…っ、私の傍に行かせて…!!! 『…こんな所にいた。さあ、行こうか』 フと、知らない男性の声が聞こえ、私はバッと顔を上げた。 目の前には、幼い私を抱えている知らないオジサン。 幼い私は、光を失っているような目をしていて、心がない人形のような顔をしていた。 知らないオジサンは、そんな私を余所に…夜の闇の森に消えていった。 幼い私を抱きかかえて…―。 『ワタシハ、ヒトリ』  
/271ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1205人が本棚に入れています
本棚に追加