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「大雨の中、何してた?」
その人は綺麗な顔をこちらに向けて、聞いてきた。
「…散歩です。ただの…。貴方こそ、何をしてたんですか?」
質問の仕方が偉そうで、少しムッとしながらも、その人に聞き返した。
「散歩…というか、暇つぶしかな。ずっと部屋に篭もってるのも嫌だから。」
火を木の棒でいじりながら、そう言う。
…引きこもりか?
「お部屋からは、そんなに出ないんですか?」
「たまに出るよ。
でも、周りは危ないからと言って、1人では出してくれない。」
悲しそうに顔を歪ませるその人の顔は、すごく酷いことかもしれないけど、綺麗だと思った。
「そう…ですか。」
何も言えなくて、他人ごとのように言った。
「そういえば、珍しいね。」
「え?」
男の人が急にガラリと話しを変えるから、聞き返すと、私の目を指差した。
「黒髪に双黒の瞳。
あまり見ないから。」
「あ…、はい。
よく珍しがられます。」
よくこの目と髪のことで、イジメられてたなぁ…。
今は、もうそんなこともないけど。
この世界では、黒い髪の人は居ても、黒髪に双黒の瞳は見ないらしい。
だから、いつも私はハズれていた。
「やっぱり。
でも、綺麗だなぁ。」
私の目を覗き込むように軽く微笑んだ。
その表情と言葉に胸が高鳴る。
今、綺麗って言った?
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