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「それはだな、俺が要子の影の代わりになってやるから要子はなんも心配せず生きて行けるって事だよ!
喰われた影を元通りにする術なんざないが、俺は人の影になる事ができるから、俺が要子の影でいる限り要子は大丈夫だ!」
「一生?」
「そ!一生だ!」
私はまた考え込んでしまう。
俯いて手を顎に添えて難しい顔をしてると、
「……嫌か?」
と、ものすごく不安気な声で蜃さんが聞いてきた。
私は慌てて顔を上げるとそこには眉尻を下げて困った顔をした蜃さんの顔があった。
「あ、いやっ、嫌とかじゃなくて、その、一生って長いじゃない?
蜃さん、迷惑じゃないのかなあと思って。」
「なんだそんな事かよ!
迷惑な訳あるか!
気にすんな!」
蜃さんは私の気持ちを聞くと安心したかのようにまた笑顔になった。
喜怒哀楽の激しい人だなあ。
でも私にはすごく嬉しい事を言ってくれた。
一生そばにいるなんて、なんだか家族以外の人にそんな事を言われるなんて思ってもみなかったから。
「ありがとう。
蜃さんは私の命の恩人なんだね。」
私はタイミングを逃して言えてなかった感謝の言葉を伝え微笑んだ。
蜃さんは一瞬だけ微妙な顔をしたけどすぐにまたあのニカッていう笑顔になり、
「気にすんなって!
これからヨロシクな!」
と言って右手を出してきた。
私も右手をだし、私達は握手をしながら笑いあった。
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